【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中

5.気の乗らない外出 -李玖-


昼休み、私はお弁当を作って来ているにもかかわらず
一人、院内レストランへと姿を見せていた。

それは、今朝お世話になった早城先生が、
お昼はレストランで昼食をとっていることが多いと殿村さんに聞いたから。

先生のおかげで、車は無事になおったものの遅刻スレスレだった私は
挨拶すらろくに出来ずに、更衣室へと駆け出した。

だからこそ……ちゃんとお礼を言えなかったことに、
胸がつっかえているみたいで気持ち悪かった。

っとはいえ……昼休み、食べるわけでもないのに早城先生の姿を探しに
レストランに姿を見せる私の動きはぎこちない。

キョロキョロと視線を動かして探し続ける私は、さぞかし怪しい。

そして相手は、あの早城先生なのだ。

目立ちたくない。
そう思い続ける私にとっては、かなり厄介な試練。

そうこうしていると、氷室先生と一緒にテーブルを囲んでいた
早城先生を見つめた。


その途端に、足がすくんでしまう。
だけどちゃんと一歩踏み出して、先生のところに近づかなきゃ。


ただお礼を言うだけなんだから。

お礼を言って、社交辞令的にお食事をって話題を振るだけ。

だけど先生はきっと用事があって忙しいから断ってくれる。
だから大丈夫。


おまじないのように何度も心の中で念じて、気持ちを奮い立たせると
私はお二人の方へと近づいて声をかけた。



「あっ……えっと……今朝は有難うございます」


あっ、ダメだ。
ちゃんと話さないとって思ってたのに、私いきなり何言ってるんだろう。

そのままどうしていいのかわからなくて、とりあえず勢いよくお辞儀をする。



「あっ、透析室の塔矢さんだよね。
 飛翔が助けてあげた子って塔矢さんだったの?」



戸惑ってどのタイミングで顔をあげていいのかわからない私に
フォローするように声をかけるのは、氷室先生。


氷室先生の声に誘われるように、ゆっくりと体を起こすと
突き刺すような早城先生の冷たい視線を感じて、体を強張らせる。



「あっ、やっぱり先生怒ってらっしゃいます?

 本当に朝は失礼なことをしてしまいました。
 遅刻ギリギリで時間がなくて……」


何かに睨まれて動けなくなったかのようにどうすることも出来なくなって、
私はそのまま言いわけと言う名の謝罪の言葉を並べた。


駄目……早く終わって欲しい。
こんな時間。


「あっ、塔矢さん。大丈夫だから。
 飛翔は怒ってるわけじゃないからね」


氷室先生はそう言って私を安心させようとしてくれるけど、
だけどやっぱり、早城先生は怒ってるよ。


無言の時間が怖すぎる。

後少し。
さっさと食事に社交辞令で誘って玉砕しよう。


「えっと今朝は助けて頂いて本当に有難うございます。

 改めてお礼をさせて頂きたいのですが、明日にでも御一緒にお食事させて頂けませんか?
 でも先生はお忙しいですよね」


お忙しいですよね……。
相手に気遣う素振りの言葉に、「断って欲しいの」願いを込めて。



次の瞬間、先生が私の申し出を断ろうと、希望通りの口を開き始めた時
隣の氷室先生が遮った。
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