【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中



思わず手にしていた携帯電話を、反対側の壁に向かって投げつける。



君の家だってかまわないんだよ。



気味の悪い男の声が、何度も何度も私の中に木霊し続けた。


慌てて開けっ放しにしていたカーテンを一気に閉めて、
ベッドの上、掛布団を被って体を小さく震わせた。





どうして、私がこんな目に合うの?
私が何したって言うの?



もう……助けてよ。
私は平凡に暮らしたいだけなのに……。




次の日、私は「祖父が他界して……」っと嘘をついて職場を休んだ。

社会人として最低のことをしてると思うけど、
それでも病院の関係者に、体調不良で欠勤なんて通用しない。

体調崩したら行く場所は病院だから……だったら、職場の病院で診察を受けて
その上でドクターの判断で働けるなら仕事。ドクターストップなら帰宅して初めて欠勤を認められる。


それゆえの……祖父の他界だった。
幸いにして、祖父は小学校の頃に本当に他界しているから……生きてる誰かを勝手に殺すことにはなってない。



祖父の葬式を理由にもぎ取った二日間の休み。

翌日から仕事が始まる、その夜。
着信指定のみにしか流れない着うたが部屋に流れた。



着信相手は風深。


「せんぱぁーい、今日は風深、びっくりして電話しちゃいましたぁー。
 先輩の住所ネットに公開されてますよぉー」


風深からの突然の電話に、私は今まで自分の身に起きていたことに納得をしたと同時に
世界の全てが私の敵の様に感じてしまった。




誰かが私の連絡先をネットに公開した?


風深から教えて貰った掲示板のアドレスに、
自分の携帯でアクセスして、自身の目で晒されてしまった私の情報に愕然とする。



その掲示板には、遊んでくださいっとタイトルが記入されて、
私の本名、電話番号、現住所、勤務先などのプライベート情報が記載されていた。




翌日、午後からの出勤の前に再び警察に相談しに行って、
携帯電話番号も解約して新規に契約しなおして電車で通勤する。



孤独感と恐怖だけが私を支配し続けて、
どんな些細な音にも、過敏に反応してびくつきながら、
誰も信じらなくなって、孤独になっていくのを感じていた。





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