【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中

13.届いたメール -李玖-



五月ももうすぐ終わってしまう。

だけど私の心は今も晴れることなんてない。
このまま梅雨に入って、雨が続くともっと気分が憂鬱になっちゃうよ。

自宅のベッドに丸まって、アンジュを抱きしめながら
その温もりを感じる。


ここ暫く、私が不安定なのをアンジュは知っているのか
家に居る時間は、ピタっと寄り添うように真っ白い体を私に寄せ付ける。


毛抜けの時期だから、アンジュがくっつくたびにお洋服が真っ白になっちゃうんだけど
それでもアンジュの温もりが今の私の一番の安定剤のような気がした。



「ねぇ、アンジュ。
 私、どうなっちゃうのかな?」

「みゃあー」


アンジュは小さく泣いた後、私を慰めるように私の顔をザラザラの舌で
ペロペロとなめていく。




今日も眠れないまま、朝の目覚ましが着信を告げた。



重い体を引きづるようにベッドから起き上がると、
鏡台の前にたって、鏡に映った顔を見つめる。



「あぁ、酷い顔……」



お手入れは必死にしてるつもりなのに、
睡眠不足もストレスもお肌の天敵。



クマが出来て、浮腫んじゃってるよ。


そんな状態を隠すように、コンシーラーを使いながら
メイクで誤魔化していく。

そのままクローゼットから取り出した洋服に袖を通した。




警察と消費者センターに出掛けて、携帯ショップで電話番号をかえてから、
突然の知らない人からの電話に悩まされることがなくなった。


電話番号と同時に変更したのは、携帯のメールアドレス。
だけどメールアドレスも、電話番号も友達にすら連絡することが躊躇われた。


友達を疑うなんてやりたくないけど、
だけど……もう一つの私の心は、犯人は友達の中に居るような気がしてた。



電話番号もメールアドレスも住所も、
そしてネットに開示されていた、細やかな情報の全て。

それは自分がやってるSNSにも記載してないことばかり。
友達じゃないと、そんな情報知るわけないじゃんって思いたくなってしまうことばかり。



勤務先とお母さん以外、誰にも伝えることが出来ない電話番号とメールアドレスと引き換えに、
私はひと時の安寧を手に入れた。


電話番号を交換してから、たびだひかかって来ていた怪しい電話も、
ずっと五月蠅くなり続けていた出会い系サイトからのメールもピタリと止まった。



それでも……住所ばかりはすぐに変えることなんて出来ない。


引っ越しなんて、そう簡単に出来るものじゃないし……
うちの家は誰でも出入り自由の、セキュリティーなんて存在しないに等しい。


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