【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中


6時55分。
塔矢が生活する伊舎堂のマンションへと到着する。


マンションのエントランスに車を停車すると、
誰が来たのかを確認するように、警備の関係者が車へと近づいてくる。



「鷹宮総合病院の早城です。
 703号室の塔矢李玖さんを迎えに来ました」


そう言って、ポケットから身分証明書を取り出して警備員に見せる。


「ご協力有難うございます。
 伊舎堂さまからお話は伺っております。

 お車は前方へとご移動をお願いします」


っと、駐車可能なスペースへと誘導してお辞儀をすると
警備員は中のスタッフへと何かを言づける。


多分、俺が到着したことを伝えたのだろう。

運転席から降りて、車に持たれながら塔矢がマンションから出てくるのを待っていると、
驚いたように塔矢は、俺の前に近づいてきた。



「1分遅刻だな」

「1分って……。すいません。
 でも先生が迎えにいらっしゃるなんて」

「昨日、伝えたはずだが……。
 まぁいい、どうぞ」


そう言って開くのは助手席。

俺の運転する助手席に乗り込むのは、由貴か時雨か神威が殆どで
異性がそのポジションに座るのも始めてた。




「えっと」


戸惑ったような仕草を見せた後、遠慮気に乗り込んだ塔矢を見届けると
俺はドアをして運転席へと乗り込んだ。


エンジンをかけた途端に、さっきまで流れていた洋楽が車内に響き渡る。



シートベルトをしたのを確認して、俺は車を鷹宮へと走らせた。


鷹宮まで約30分の道程。

車内には洋楽のサウンドが響くだけで、
会話らしい会話もなかったが、彼女が隣に大人しく居てくれると言うだけで
少し安堵している俺が居た。




「母が君の為にサンドウィッチを作ったらしい。
 後部座席の紙袋に入っている」


「あっ、有難うございます」


そう言うとアイツは後部座席へと体を向けて、
紙袋の取っ手を掴み取る。



そのまま膝の上において、紙袋の中を覗き込むと、
紙袋の中に手を突っ込んでゴソゴソしているみたいだった。




「有難うございます。
 美味しそうですね」

「朝食まだなら食べていいぞ」


前方を見ながら伝えると彼女は一切れのサンドウィッチを両手でしっかりと掴んで
口の中へと誘っていた。



30分のドライブはあっという間に過ぎて、
病院につくころには母の朝ご飯も完食してくれていた。



「ごちそうさまでした。
 とても美味しかったです。
 卵焼きが分厚くて、甘くて美味しかったです」

「そうか。
 今日は検査の後、仕事はするのか?」

「それは先生たちの判断になると思います。
 私的には、もう仕事したいんですけど」


そう言いながら塔矢の表情は曇って行く。

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