いつか、きみに、ホットケーキ
4. 月曜日

「えー?なんでだよー。明日湖山が休みだから、俺明日大沢くんにお願いしたかったんだよー。」
「あぁ、突然ですみません。でもどうしても用事があって・・・。金曜日にはそんな話なかったじゃないっすか。だから予定入れちゃったんです。」
「忘れてた。忘れてたの。その話があったときに、大沢くんにお願いしようって思ってたんだけど、君、金曜日は直行直帰だったじゃないか。」
「でも、いつもどおり会社には連絡入れてました。そんなの理由になりませんよ」
「でも、突然過ぎるでしょ?明日有給くださいっていうのは。」
「金曜日の仕事の様子を見てお願いしたことです。」
「でも、今日は僕が明日お願いしたいことがある、と言ってるの。」
「僕じゃなくてもいいじゃないですか?どうして僕なんです?」
「明日湖山が休みだから」
「ちょっと・・・そんなんオカシイ・・・!」

「行ってあげなよ、大沢くん。大沢がデキる奴だからじゃないか。そうですよね?・・・ほら、ね。そっち切り上げたらとかでいいんじゃない?」
「ちょっと、湖山さん・・・」
「あ、そだ!俺、今日早めに上がりますんでよろしくー」

昨日も呑みすぎた。土曜日に呑みすぎたから、って言い訳しながら、それでも昔の仲間たちといると大騒ぎするくらいは呑む。今朝はちょっと辛かった。
早めに上がってのんびりギャラリーに行って、最終日だから終了時間も短いし少し片付けも出来るかもしれない。

「飯の時間ですよ、湖山さん。蕎麦行きましょうよ。」
「あ?ああ、もうそんな時間かあ。蕎麦ね。蕎麦行こう。」

事務所から少し遠いけれど本格的な手打ち蕎麦を打つ店に向かう。歩きながら大沢が珍しくこぼしている。

「ったく。勝手すぎなんですよ、あの人。俺、すっごい苦手」
「でも、いい仕事すると思うよ」
「そうですかね?俺はぜんぜんそう思いませんけど」
「きっびしー」

大沢はちょっと項垂れる。

「ごめんなさい。」
「え?いや、好みだからね。いいんじゃない?」
「そうじゃなくて、明日の手伝いの事」
「なんだよ、そんなん、いいって。もともと一人でやるつもりだったって言ったじゃん。昨日だって無理すんなって言ったのに、お前いつまでも引き下がらないからつい口出ししちゃったのも俺だし。」
「ほんと、やだ。今日の明日なんて急すぎますよ。ま、いつ言われたって断りたいんだけど」
「あいつ最近よくお前に頼みたがるよね。ま、しょうがないよ。さっきも言ったけど、本当に大沢くんデキるからだよ。誰だって、有能な助手と組みたいでしょ?」
「・・・」

大沢は何か言いたそうな顔だ。でも二人は蕎麦屋の前に着いた。湖山が引き戸を開けて暖簾をくぐる。取り残された大沢が仕方なしに湖山の後に続いた。
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