『武士ドルの秘め事~無双の月』
毘沙門天に抱かれて…。
淡い霧が視界を奪う中に私は1人佇む……。
なぜこんなとこにいるのかわからない……………………。
先程までベッドで寝ていた筈だったのに………………。
なぜか見渡す限り濃霧の中にパジャマ姿でいた。
“~♪♪~♪♪~”
どこからともなく琵琶の音が聞こえる‥‥。
その琵琶の音だけを頼りにただ霧の中を前進する。
―――そして‥やがて霧が晴れた向こう側にお堂らしき古い造りの建物が現れた。
“~♪♪~♪♪~”
琵琶の音色はどうやらこの建物の中から聞こえてきているようだ‥‥‥。
―――ビュウゥゥゥ~。
肌を指すような冷たい風が一吹き私の背後に吹き付け思わず身を震わせる。
「――――すみません‥‥。」
勇気を振り絞りお堂の階段をあがりゆっくりと引き戸をあける‥‥‥‥。
―――ベンッ‥‥‥。
琵琶の音色が突然途切れたように辺りは真っ暗だ‥‥‥。
「すみません‥‥‥。」
不気味な光景に心細くなり私は暗闇に向かって呼びかけた。
―――すると背後から突然月の光が差し込みやがて‥‥お堂の中の毘沙門天像を照らした。