片恋綴
ありのままの君が
溜め息ばかりが口をついて出てしまう。それでも仕事中は必死に笑顔を保ち、出来るだけ柔らかい声を出す。

完全に油断していたのだと思う、と、もう勝手に出入り出来なくなってしまったアパートの一室を見上げながら思いを馳せる。

そしたまた、仕事に行けば溜め息を隠す。

いつまでこんなふうに過ごせばいいんだろう。

「永久ー」

呼ぶ声に振り向く。出来るだけ、素っ気なく。

すると階段をかんかん、と下りる音が聞こえ、僕の名前を呼ぶ姿が現れる。

「窓から見えたよ」

琴子は笑顔でそう言った。

保育園のときからの付き合いになる彼女はもう、僕の知っている彼女ではない。

随分綺麗になり、随分と自信をつけ、僕と過ごす以外の世界を知ったのだ。



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