片恋綴
カナワナイ


叶わない、敵わない、カナワナイ。

いつまでこんなふうに悩めばいいのか。完全に出遅れたのは自分のミスだし――いや、ミスなのかどうかはわからない。

出遅れたのでもないのかもしれない。いや、出遅れでなんかない。たんに、意味ないだけ。

意味ないなら、なんでやめないのか。簡単にやめられるのなら苦労なんてしない。悩みもしない。

「祐吾君?」

煙草の煙を吐き出したタイミングで声を掛けられた。

「原崎さん」

俺より背が高く、俺より逞しく、俺よりカッコイイ人がにこにこと近付いてきた。

「未成年は煙草駄目なんだよ?」

原崎さんはにこやかな表情のまま言うと、俺がしゃがみ込む隣に腰を下ろした。

男なのにふわり、と何処か甘い香りが漂ってくる。

つい目を閉じたくなるくらいにいい匂い。それが何の匂いかは知らない。ただ、甘い匂い。



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