片恋綴
心が高鳴るのは本当だから。


綺麗な女の人と、何処か甘さのある顔立ちをした男の人。

それはあまりにお似合いで、割り込む隙なんて見付けられない。

「あれ、ポチちゃん、今日は出勤だったんだ」

何処か甘さのある顔立ちをした男の人――原崎さんは私を見付けてにっこりと笑う。それに嬉しさが込み上げる。

それでもその目の前に座る凛とした女性に目を奪われる。

長い黒髪を綺麗に纏めて、化粧は薄い。それでも綺麗な人だということは十分にわかる。

原崎さんとこの人が一緒にいるのは初めて見る。というより、原崎さんが女の人を連れてくるの自体が初めてだ。

「初めまして。綾田千歳です」

その人は私と目が合うと丁寧な仕草で頭を下げてきた。洗練された人。

「薙野理生ですっ」

それにつられて私も慌てて頭を下げる。


< 49 / 146 >

この作品をシェア

pagetop