幻想国物語 * 黒の魔導師と白の姫君
その丘の奥に広がる森は、行く人すべてが帰ってこない……「死の森」と言われ恐れられていたから、人々は皆恐怖した。


そうね。


今は「北ノ森」と言われているわね。


ただ今もその言い伝えは伝承されていて、誰も近づく者はいない。


あら? ソフィ。そんな顔して。


興味本位で近づいて、二度と出られなくなりますよ。


ほらほら、いい? 続けますよ。


青年は、「我こそがこの地の王たる存在である」と、宣言して、消えたと伝えられているわ。


そして青年が去った後の人々の間に植えつけられたのは、勿論、恐怖心だった。


でも、誇り高き豪族たちに植えつけられたのは、恐怖ではなく、怒りだったのよ。


それまで争いを繰り返した豪族たちは一斉に手を組んだ。
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