あなたのギャップにやられています

「冴子、あのさ……」

「雅斗、前に言ってたよね」

雅斗がなにかを言いだす前に、どうしても伝えたかった。

「ん? なにを?」

「私のヌード、描きたいって」


雅斗の顔を見つめると、すごく驚いた顔をしている。


「お、おう」

「描いて。その代わり実物よりきれいに」

「実物よりきれいにって……。でも冴子、だってお前……」

「真っ裸ははずかしいから、上だけだよ?」


私は雅斗の手を取って、いつも彼が絵を描く部屋に連れて行った。


「どういう格好すればいい?」

「冴子、でも……」

「描きたいんでしょ? その代わり、雅斗のすべてをかけて描いて」


少しも横見しないで、全身全霊をつぎ込んで――。


「ダメだ。ヤりたくなっちゃうから」


そんなの嘘だ。
あなたは自信がないんだ。

揺らいでいる気持ちのまま、一番の絵なんて描けないから。

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