あなたのギャップにやられています

「あっ、ありがと」


ずっとパソコンとにらめっこしていた私に、スーッとコーヒーが差し出される。


木崎君は私なんかよりずっと気が付くし、物腰柔らかだし、専業主夫にでもなって絵を描いていたら幸せだろうななんて勝手に想像している。


「これで完成ね。木崎君の言うとおり、こっちの色の方がしっくりくる」


彼はホンワカしているように見えるけれど、デザインをするときは目が鋭くなる。
そして、ほんのわずかな色の違いまでこだわる彼のプロ意識は、普段の彼の姿からは想像できなくて、最初はとても驚いた。


「冴子さん、おかげで間に合いました。ありがとうございます」

「お礼はいらないわよ。私の仕事でもあるし。
それに、これ、ほんとによくなったと思わない?」


それはとある食品会社から発売されるお菓子のパッケージデザインだ。


ここの仕事はやりがいがある。

デザインは大まかな条件だけであとはお任せという会社も多いのだけれど、この食品会社はかなりこだわりもあって、かなりの数のパターンのサンプルを制作するし、パッと見て気にならないような細かい部分の指摘もしてくるから、何度も何度も修正が必要になる。

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