あなたのギャップにやられています

もしも失敗したら、自分はなにもかも失ってしまう。

口では冴子のためだとか言いながら、結局、イギリス行きを決断できなかったのは、自分の度胸のなさなのだ。


だけど……冴子が信じてくれるなら、成功できる気がする。
いや、彼女のためにも成功しなければならない。

あの丘で、冴子と一緒に星に手を伸ばしたとき、彼女と一緒になら、あの星をつかめると思ったじゃないか。


いつまでたっても認められない俺の絵を、ずっといいと言い続けてくれた彼女に、それが正しかったと証明したい。


俺は覚悟を決めた。

本当は彼女を連れて行きたい。
だけど、修業の身では彼女を幸せにするどころか、飯を食わせてやれるかどうかすらわからない。

美術館での仕事を提示されてはいたものの、イーイマージュほどは稼げそうになかったからだ。

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