あなたのギャップにやられています
「もう、あんまり見るなよ。恥ずかしいだろ」
いつの間にか横に来ていた木崎君が、溜息をついている。
「どうして? こんなにすごいのに? 私、もっと見たいよ」
更に足を踏み入れて、そのひとつに手を伸ばす。
「あぁ、それか。冴子にあげた絵と同じ時期に描いたものだ」
「やっぱり」
幻想的な月に照らされた穏やかな海。
そこに真っ白なワンピースを着た長い髪の女の人。
「素敵」
「嫉妬しない?」
「嫉妬?」
「この人に」
彼はその絵を自分で掲げて目を細める。
「この人、木崎君の恋人?」
「もしそうだったら?」
そんな問いかけにハッとして彼を見上げると、彼は絵から私に視線を移した。