蕾は未だに咲かないⅠ

予兆




すっかり慣れた煙草の匂いに見向きもせず、真っ直ぐカウンターに向かうと、椅子に座る前に目の前のスキンヘッドの男を睨むように見た。


「…また“獣の暴走”か?」


そして答えを聞く前に、高く設定された椅子に腰を降ろした。

スキンヘッドの男は、透明なグラスを一つ拭き終わってから重たそうに口を開く。


「獣と言うより、あれは立派な殺人鬼だな。殺傷能力を擦り込まされたみてえだ。」


こいつはまた、正直な感想を述べてくれるもんだな。本人に聞かれたら目で殺されるぞ。


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