蕾は未だに咲かないⅠ



引っ張られるまま足を突き動かしていると、着いたのはいつもいた別邸で、連れ戻されただけだった。

と思っていたのだけど、それは少し違った。


戻った時、汚れたまま浴室に放り出され、相変わらず無言の威圧をかけられた。

そして身体を綺麗にし、新しい服に身を包み――


「え」


鶴来さんに「来い」と淡白に言われて連れて行かれたのは、二階だった。

中庭側なのは変わりないけど、窓は小さいし、とてもじゃないけど逃亡は不可能だ。


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