Chain~この想いは誰かに繋がっている~
「それなのに、言えなかった……」

“好き”だって言うタイミングは、何度もあったはずなのに。

「言って、私の勘違いだったらって思うと、好きって言えなかった……」


何度も何度も、一緒に飲みに行って。

何度も何度も、二人っきりになったこともあるのに。


「ねえ…親方。“付き合う”って、契約みたいなものなのかな。」

「契約、ですか?」

親方の返しに、大きく頷いた。

「どんなにお互いがお互いを想っていても、“付き合おう”って言わないと、自分のものにはならない。」


そうだよ、周平。

一言、それを言っていれば、私と周平は今頃、結ばれていたはずなのに。

悔しくて、悲しくて。

涙は、とめどなく流れてくる。
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