Be yourself!

「――池中です」

「あ、藍田です、失礼します!」



中にはなんだか明らかに上品そうな……眼鏡の素敵な人を中心に、デイジーレコードのお偉いさんも四、五人円卓を囲んで座っている。


あの眼鏡の人以外は、見覚えがあるけど……。



「君が藍田さん? 僕が急に来たものだから、急に呼び出すような形になって悪かったね」



メタルフレームのその人は、黒髪を後ろに流し、三つ揃いのスーツを着ていた。

年のころは三十代後半くらいだろうか……。

落ち着いた、インテリジェンスに満ちた優しげな微笑みを浮かべてはいるけれど、明らかにここにいる重役たちが気を使う立場の人だって、一目でわかった。


彼が私を出迎えるように立ち上がると、慌てて全員で立ち上がり、私へと近づいてくる。


眼鏡の人はそんな雰囲気にも慣れっこなのか、特に気にした様子もなく自ら名刺を取り出し、私に差し出してきた。


私も慌てて、デニムの後ろポケットにねじ込んでいたお財布から、ついこないだ御子柴さんに作ってもらった名刺を取り出し交換させてもらった。


受け取った名刺に目を落とすと『一丸銀行・頭取 一ノ瀬和司』と書いてある。



へー……ほー……

って!!!!


と……頭取!?




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