夜香花
「用心深いのは認めるがな、あまり俺を買いかぶるな」

「ほほほ。わしは頭領を昔から見てきました故、この目に狂いはないと、自信を持っており申す。現に、羽月にとってはその子供、脅威だったのでありましょう」

 からからと笑う長老に、真砂は黙った。
 小さく息をつき、頷く。

「そう……だな、確かに。羽月は脅威とは思ってないだろうが、俺からしたら、完全に負けてた。その辺りがわからんのも、致命的だな」

「おや? そういえば、羽月は生きておりますな。つい先程、清五郎に食ってかかっておりました」

「清五郎に?」

「何やら、もっと強くなりたいと訴えておりましたな。清五郎に、稽古をつけてもらえるよう頼み込んでいたようで」

「いきなり清五郎か。捨吉でいいだろう」

 ふふふ、と長老は含み笑いしながら、茶碗に口を付ける。

「今まで捨吉に教わって、いざ任務に当たってみれば、敵に捕まるわ頭領のお役には立てないわ、このままでは駄目だと考えたのでしょう。まだまだ未熟ですな。教わったことを昇華することもせず、師を変えればいいと考えるうちは、まだまだです」
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