夜香花
「不思議な子だねぇ。忍びとしての知識はそうないのに、能力は相当なものだ。これだけ走っても、大して疲れてないだろ。息も上がってないじゃないか」

 言われて初めて、深成は己の体力に気づく。
 先程から、ずっと小走りだ。

 山の中である。
 しかも山道を行っているわけでもない、道なき道だ。
 なのに大して疲れていない。

「深成の党ってさ、どうも、そんな有名な一党じゃなかったみたい。でもお前を見てると、結構優秀な忍びの党だったのかなって思う」

 しみじみと、前を行く捨吉が言う。

「有名な党っていうのだけが、優秀なんじゃない。元々忍びは、陰の存在だ。むしろ、本当に優秀な忍びってのは、世間一般には知られてないのが普通なんだ。完璧に陰に徹して、且つ確実に仕事をするってことだから。頭領が良い例だよ」

「真砂?」

「そう。頭領だって、その存在自体は、多分誰も知らないさ。誰のお抱えにもなってないし。依頼も連絡係を通して受けるだけだしね。忍びの世界では有名かもしれないけど、頭領の姿形とか、そこまでは誰も知らない」

 深成は少し考えた。
 深成も一応、忍びの里で育ったはずだ。
 もっとも実際里にいたのは、僅かなのだろうが。

「わらわは知らなかったけど」

「お前はしょうがないさ。まだ小さいし。それに里にいるより、城下にいるほうが長かったろ? その前に、仲間が周りにいなきゃ、情報だって入りようがない」
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