夜香花
「いざというときの避難場所に、お前を送り込んでおいただけかもしれんがな」

「避難場所?」

「一族の誰かを、残しておきたいとか思うんじゃないか? お家が大事な奴らは」

「?」

 真砂は、疑問符の浮かぶ深成の顔を、穴が開くほど見つめた。
 何が何だかわからず、深成も真砂の目を見返す。
 しばしそのまま時が流れ、やがて真砂が、視線を落として息をついた。

「……どうするかな」

「何が」

 さっきから、深成には話が見えない。
 相変わらず疑問符の浮かぶ顔で、真砂を見る。

「お前がさっき自分で言ったように、この里の者の中には、どっかの殿様と繋がっている者はいない」

 こくり、と頷く。

「いるとしたら、部外者だ」

 じ、と真砂を見ていた深成の目が、僅かに見開かれた。

「……わらわ?」

 今度は真砂が頷く。
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