夜香花

「お方様の、何を爺が探ってたっての？」

「さぁな。でも多分、お前の爺が探っていたわけではないだろう。爺が、主から命じられてたんじゃないのか？」

「主？」

　きょとん、と深成は首を傾げる。

「頭領は、とっくに死んじゃってたみたいよ」

　ん？　と真砂は深成を見た。

「わらわの党、爺しかいなかった」

　ああ、と納得し、真砂は考えを巡らせた。
　今までの情報を元に、口を開く。

「それでよく、党と言えるな。お前も不思議に思わなかったのか？　党という認識は、爺に教えられたのか？」

「うん……。家に帰るたびに、忍びの術を仕込まれるし。何でかなって思ってたら、爺が教えてくれた」

「お前は忍びの一党の、生き残りだってか？」

　こくん、と深成は頷いた。
　膝を抱えて丸まる。

「伊賀の乱で、皆死んだって。だから、わらわがお方様に仕えてるのは、ただの奉公だと思ってた」