ひまわりに

Episode7『奈々の不安は勘のせい』


もうお昼で、お弁当食べてる。
翔は・・・
雷樹にお弁当を届けにいった。
優しい奴やね、ホンマ。

今日は朝から、みんな落ち着きがない。

十中八九、涼の影響やと思う。
だって・・・あの日から、
みんなの心の中心には涼がいたんやし
記憶がない、
なんて状態で目の前に居られたら
何もできん。
涼を置いて行動するなんて絶対できん
ずっと、気にしとらんといけん。
この5人には、そうゆうの向いてない
みんな好き勝手やってこその
メンバーだから。

「ー奈々・・・さん?」

「・・・へ?」

涼が『さん』とか、
いらんもん付けて呼ぶ。
調子狂うから、やめてほしい。
今までは、アタシがヤメろや言うても
『ナっちゃん』って、
ふざけた呼び方しとったくせに!

「なんで、
そんなんいらんもんつけんねん!」

「え・・・陽輝くんが
『最新の注意を払って接しろ』って
言うから・・・。」

「はぁるぅきぃ~!」

「うっわ!鬼!?」

「鬼ちゃうわ!」

最近、陽輝と何気なく・・・
ふざけ合ってることが、
嫌なわけやないけど・・・
なんか不安になる。

ー陽輝の顔が、暗くなってるから。

前までは、めっちゃノリよくて・・・
なにかと笑い飛ばす奴やったのに、
今は・・・いろいろ
気ィ使うような真似してくる。

「ところで・・・2人って、
特別な関係?」

「はぁ?」「なんやの?ソレ。」

こうゆう誤解・・・
てゆうか勘違いされること、
なんでか知らんけどめっちゃ有る。
その度に・・・
うわぁ~。きっしょ!って、なる。
対応はなれてしまったし・・・。
ー真っ向から否定すると茶化される。
呆れた顔で、理由を聞くのが、
丸く収める秘訣。

「すごく・・・仲が良い 。
ってゆう一言で収まらない
関係にみえた。」

ーぷぷっ・・・!

しばらく沈黙したあと、笑ってしもた。
こんな・・・
それっぽいコト言うたやつ
初めてやったから。

陽輝も思うことは同じらしい、
失笑してる。

「アンタ、
何をソレっぽいこと言うとんねん!」

「・・・ちげーだろ。
まずは否定しろ!」

「アンタかて・・・笑っとるやん!」

「え?違うの?」

涼が、目ぇまん丸にして驚いてる。
もう、笑いが止まらん・・・!

「ちゃうよぉ~!こんなカップル、
いるわけあらへんやん、
見たことあらへんやろ?」

「・・・ったく、
涼にまで疑われるなんて、
オレらそんな仲良く見えんの?」

「すっごく、なんの違和感もないよ?」

即答かい!なんやねん、こいつ。

「ないわぁ~、きっしょ!」

「気持ち悪っ・・・・・・。」

「そうなんだぁ・・・」

涼は、
やっぱり納得いかなそうにしてる。
でも、
こんな平和に会話できる日が・・・
くるなんてなぁ。

ー涼が事故に遭って、
話しかけてもピクリとも
せんかったときは・・・
ほんと泣いた。

平和や、ホンマええ日。
まぁ、
雷樹と翔はずっとピリピリしとるけど。

涼は、アタシらに興味もってくれとる。
今日の放課後、思い出話したろか?
って聞いたときは、
はじける笑顔で
めちゃめちゃ喜んどった。
病院の先生にも、写真を見せたり
思い出話をすることは
記憶を取り戻すきっかけになるって
教えてもろたし・・・。
はやく思いだしてもらわな・・・
頑張らなあかん。

ー翔のは止めがいつ効かなくなるか、
わからんから。
たぶん、アイツは。
雷樹のこと、
恋愛感情で『好き』なんやと思う。
でも、雷樹と涼のために。
気持ち、押し殺しとる。

アタシは、
今までの関係は壊したない
・・・絶対。
今やて、
楽しく過ごしていられるか
・・・いられなくなるかの境界線、
ギリッギリんとこ。
誰か1人でも狂ったらアウト、
おしまい、
ゲームオーバー。
今んとこ危ないんは雷樹と翔、
見とるだけで危なっかしい・・・。
『アンタらは、何もせんでエエ。
余計なことせんといて!』
そう・・・叫びたい。

「奈々ちゃん、お弁当・・・。
止まってるよ?」

「あ・・・あぁ、ちょぉ、
気分わるくて・・・。」

「おぃおぃ、
お前の食い意地どこいったんだよ!」

「はぁ?食い意地なんか
はっとらんわ!」

アタシが身を乗り出すと・・・
そのスキにアタシの弁当を奪う。

「おむぁえのへんとぉ、
むらにむまいんだぉなぁ~。」
(お前の弁当、
無駄に美味いんだよな~。)

「勝手に食うなや!
しかも食いながらしゃべんな!
汚い!」

陽輝が全部飲み込んだあと、
めんどくさそうに言った。

「どぉせ食べる気ねぇんだろ?
夏なんだから、
家持って帰ったりしたら悲惨だぜ?」

「まぁ・・・そうやけど。」

たしかに、
持ってくるときは保冷剤あったけど
もう全部溶けてる。
夏だし、悪くなるから
消費してくれんのはありがたい・・・
けど

「だからって・・・
女子の弁当(食いかけ)
何の抵抗もなく食う
男子高校生なんて
めったにおらへんよ・・・
なぁ?涼?」

「・・・やっぱり、仲良いんだね。」

「・・・?」
「なんやねん・・・また。」

陽輝は
何か言いたげそうな顔をしたけど
口にめっちゃモノ入ってるし・・・
話せるどころではなさそうだった。

「僕の友達て・・・
今のところ君らだけだけど。
形だけって感じがして、
ちょっとさみしいんだよね。」

「そんなっ・・・。」

ー言葉が出なかった
 否定できん・・・。
 アタシらからして・・・
大切な友人であっても、
涼からは・・・
まだ『知り合い』程度なのだろう。
 
もう何やねん・・・アタシ、
こうゆうジメェっとしたの
苦手なんよぉ。

ーあの緊急手術室前で・・・
絶望していた時をおもい出すから。

「今日の放課後、
本当に楽しみだなぁ・・・。」

涼は、アタシの顔をみて・・・
話題をそらした。
だめやん、アタシ・・・
涼に気い使わせるなんて。

ーもしかしてこいつ・・・
記憶のこと、諦めてるんやない?

ふと、そんな考えがよぎる。

ーもう、記憶ンことは諦めて・・・
純粋にアタシらといちから
新しい関係を築こうとしてる?

アタシのこうゆう『勘』って、
あたってまうんよね・・・。
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