ハロー、バイバイ!


ーー今更、正月行っても、邪魔だし…

雪まつり行ったら北海道土産届けるついでに顔みせればいいよ、という誠のために美紗は、雑煮とささやかなお節を作った。


お節はスーパーで買ってきたものを重箱に詰めただけだったけれど、彩りよく結構豪華な感じになった。

二人だけで食べるのなら、充分だ。

里芋と人参と椎茸の煮物だけ自分で作った。

人参は花の形に切った。


「美紗、すげえな!こんなの実家でしか食ったことないよ」


ビールを飲み、昆布巻きをつまんで誠は上機嫌に言う。


「やだあ。誠、大袈裟。買ってきたものばかりだし」

美紗は嬉しくて笑った。


ふと思う。

誠の前の短い結婚生活はどんなだったんだろう。

出来合いでも、こんな風に前妻がお節料理を用意することはなかったのだろうか。


自分自身の選択だったとしても、誠にとって前妻との離婚はあまりにも代償が大きかった。


テレビを見る誠の好ましい横顔を見ながら、美紗は思う。


…来年の正月は、誠のために、もっとちゃんとお節を作ろう、と。





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