ペテン死のオーケストラ
翌日からマートルは必死で働きます。

マルメロを背中に背負い、仕事をするのです。

その姿は、あまりにも哀しく、痛々しさを醸し出していました。

しかし、マートルは働かなくてはいけません。
マルメロを養うためには、周りからどう思われようが構わないのです。


「マルメロには辛い思いはさせたくない」


マートルは必死に頑張ります。

家ではジキタリスの悪態に我慢する日々です。

ジキタリスは事あるごとに「早く捨ててこい」とマルメロを指差して言います。

マートルは苛立ちながらも、微笑んでやんわりと否定します。
ジキタリスの逆鱗に触れないように。

マルメロが泣き出すとジキタリスは怒り出します。
マートルはマルメロを抱き上げ、外に出かけなければいけません。

12月の夜の冷え込みは、マートルとマルメロの体力を奪います。


「マルメロ、早く泣き止んで?」


寒くかじかんだ手でマルメロを優しく撫でてあげます。
体が冷えないように、しっかりと抱きしめ。

風が当たらないように、マートルの体でふせぎ。

可愛らしいマルメロを大切に大切に守りました。


「マルメロは、素敵な夢を叶えてね」


マートルは、マルメロをあやしながら繰り返します。

「一緒に幸せになろうね」

マルメロは希望の子供なのです。
マートルの叶わなかった幸せを叶えてくれるであろう希望の子供。

マートルの夢はマルメロへと受け継がれたのです。

しかし、マートルの人格を崩壊するほどの出来事が起こります。

ジキタリスが女を作った。
これが事の発端でした。
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