ペテン死のオーケストラ
マルメロは苛立ちます。

「私は潔白です。もし、それでも死罪なら仕方ないこと。私の死期だったということです。こそこそと生きるだなんて嫌です」

これはマルメロの本音です。
死ぬのは嫌ですが、生きて死ぬよりはマシだという考えなのです。

ハンノキは「駄目だ」と言います。

二人の会話にストケシアが我慢できず参加します。

「マルメロ様、どうかハンノキ様の言う通りにして下さい」

「まったく、ストケシアまで何ですか。もっと強くなりなさいよ」

「マルメロ様を救えるのはハンノキ様だけです。お願いします。俺のためにもハンノキ様の言う通りに!」

「そうだぞ。ストケシアの言う通りだ。ワシに任せておけ」

「嫌です。何度も言わせないで下さい。私は誇りを持ち生きたいのです。逃げ回るような生き方は嫌なのです」

「マルメロ様、逃げるべきです。今は逃げるべき。城の者達はマルメロ様を犯人に仕立て上げています。お願いします。マルメロ様が亡くなるなんて耐えられません」

ストケシアまでも泣き出してしまいます。

「ストケシア、お願いだから泣かないで。大丈夫よ。私はまだ生きているわ」

「でも、死罪になったら…」

「受け入れるのよ。私は心の準備が出来たわ」

マルメロは、強く凛々しく言います。

「心配しないで。私は大丈夫だから」

ストケシアは涙を堪えるのに必死で言葉が出ません。

ハンノキは言います。

「相変わらずだな。しかし、ワシは話しを進めるぞ。マルメロを救い出す」

マルメロは諦めます。
ハンノキは言い出したら聞かない所があるからです。

「わかりました。でも、無茶はしないで下さい」

「任しておけ。では、ワシらは帰るぞ」


ハンノキは笑顔、ストケシアは泣き顔で帰っていきました。
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