ペテン死のオーケストラ
しかし、一人の男が叫びます。

「駄目だ!いくらサイネリア様の願いでも駄目だ!マルメロは犯罪者だぞ!」


この声に、周りの人々は力を取り戻します。

「そうだ!マルメロは罪をおかしたんだ!」

「サイネリア様まで巻き込むなんて信じられない!」

「マルメロを捕まえろ!」

サイネリアは泣き叫び、マルメロに駆け寄ります。

「マルメロ!謝りなさい!謝るのよ!!そして、慈悲をもらうの!!」

マルメロの腕を掴み、サイネリアは言います。

「お願いだから!お願いだから、謝って!!」


マルメロは唖然とします。

サイネリアは演技なんかではなく、本気なのが分かるからです。

「サイネリア、何なのよ?急に…」

マルメロは、言葉が出ません。

人々は、言います。

「サイネリア様、おどき下さい!マルメロを処罰せねば!」

サイネリアは悲鳴に近い声で叫びます。

「駄目よ!マルメロは無実よ!」

「しかし、マルメロ自身が罪を認めたのですよ!」

「マルメロは負けず嫌いなの!だから、謝らないだけよ!!」

「そんな、馬鹿な理由がありますか!サイネリア様、おどき下さい!」

「嫌よ!絶対に嫌!!」

サイネリアは狂ったように、怒鳴ります。

人々は困り果てました。

サイネリアはマルメロに泣きながら訴えます。

「一言、たった一言よ。謝ればいいの…」


マルメロはサイネリアを見て悲しくなります。

「サイネリア、しっかりしなさい。今の貴女は、小さな子供みたいよ」

サイネリアはマルメロに抱き着き泣くばかり。

どうしたら良いか、と人々は話し合います。

マルメロはサイネリアに言います。

「らしくないわね。どうしたのよ?強気なサイネリアは何処かしら?」

挑発してもサイネリアは泣くばかり。

マルメロは呆れました。

しばらくの時間が経ち、一人の女が言いました。

「一日、猶予を与えましょう。処罰を与えるにしても、罪の意識を持たなければ意味がないわ」

この意見には、マルメロ以外全員が賛成しました。

「明日、マルメロを処罰する!一日、しっかり罪を反省するように!」

それだけ言うと、ぞろぞろと帰っていきます。

マルメロはサイネリアに言いました。

「ストケシアが酷い怪我なの。急いで治療を」

サイネリアはマルメロから離れたくないのか抱き着いたままです。

マルメロは、一人の男に声をかけます。

「そこの者!ストケシアの治療を!あと、サイネリアを連れていって下さい!」

サイネリアは「嫌!」と叫びますが、マルメロはサイネリアを力いっぱい離します。

「サイネリア、しっかりなさい」

マルメロは、それだけ言い後は喋らなくなりました。
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