ペテン死のオーケストラ
図書館についたマルメロは、本を手に席につきました。

そして、考えます。

「貴族だけ呼ぶ…、大丈夫ね。紛れてしまえば分からないわ」

「まずは、衣装よね。何とか上手に作り上げないと…。お金はないから、家にあるもので私の魅力を引き立てるものを作るわ」

「靴は無理。隠しましょう」

「宝石類もないけど、その他で上手くごまかすわ」

「化粧、髪型も何とかしないと。大丈夫、私は手先が器用だから」

マルメロは、本を読みながら頭の中では違う事をずっと考えていました。

「大切なのは自信よ!必ず、自分の手で掴み取るのよ」

マルメロは本を閉じ、席を立ちました。


家に帰り、早速準備に取り掛かります。
来週までに仕上げなくてはいけません。

まずは、コルセット。
捨ててある厚紙を切り、麻の糸を通します。
自分のお腹にあて、締め上げると麻の糸が肌に触れ痛みが走ります。
しかし、「お洒落に苦はつきもの」と、マルメロは考えました。

次は、大切なドレスです。

自分の部屋を見渡して、大きな布をさがします。
黄ばんだ白のカーテンしかありません。
マルメロは考えました。

「染め上げるしかないわね」

マルメロは急いで、庭に出ました。
マルメロの庭にはブルーベリーがなっています。
摘めるだけ積み、カゴにいれました。

家に戻り、ブルーベリーを大きな鍋にいれ潰しながら熱します。

「まったく、力仕事は嫌いなのよ」

マルメロは愚痴を言いながらも、作業を淡々とすすめます。
大きな鍋に、カーテンをゆっくり入れていきます。

「綺麗に染まってよね」

マルメロは様子を見ながら、カーテンにブルーベリーの汁を吸わせます。

鍋ごと、庭にもっていきカーテンを絞っては染め、絞っては染めを繰り返しました。

かなり時間がかかりましたが、淡い紫の美しい布が出来上がりました。

マルメロはブルーベリーまみれになりながら満足げに笑いました。

直に母親も帰ってくるので、今日の作業は終わりにしました。
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