ペテン死のオーケストラ
プチ・ガーデンに着いたマルメロはボーッと考えていました。

「小さい頃から、何も成長していないわ。ちょっとした事ですぐに動揺するねよ」

「私は皆から認められたい、ただ、その夢に向かって歩いていけば良いだけ」

プチ・ガーデンは、今日も穏やかな雰囲気です。
暖かい気候も手伝って、草と土と太陽の香りが気持ちを落ち着かせてくれます。

「クンシランか…。赤ちゃんって可愛らしいけど恐いわ」

マルメロは、サイネリアの子供と触れたことで分かったことがありました。

「私は子供が嫌いなのね」

何を考えてるか分からない未知の生き物だとマルメロは考えたのです。

「よかった…、子供を産まなくて。こんな私が母親だなんて絶対に無理よ」

マルメロは、自分に子供ができない事を少し自慢に思いました。

「さぁ、いよいよ私の夢への物語が始まるわ。サイネリアには感謝してあげてもいいわね。王族と関わりがあるなんて、なかなか無いもの」

マルメロは、泉に近づきました。
泉はとめどなく美しい水を溢れさせています。

「このチャンスをモノにするわ。王を魅了してやる」

マルメロは泉に話しかけます。

コポッと泉が返事をしました。
マルメロは一人笑ってしまいます。

「上手くいけば、都入りもできるわ!そうなれば、人々は嫌でも私を崇拝しなければいけない!」

マルメロは体に力が入りました。
この町の人々は、マルメロを昔から嫌っています。
ハンノキと結婚してからも、その事には変わりはありませんでした。
寧ろ、妬みや嫉妬が増えました。

「見返すチャンス。面白くなってきたわ」

マルメロは、すっかり自信と落ち着きを取り戻していました。
後は、ハンノキに許しを得るだけです。

「ハンノキは余裕ね」

マルメロは笑います。
しかし、マルメロの予想とは違いました。
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