ペテン死のオーケストラ
マルメロの母親はハンノキに言いました。

「小さい男だね!いいじゃないの、マルメロが舞踏会に行くぐらい」

マルメロは驚きました。
母親が味方してくれるとは思わなかったからです。

母親は続けます。

「ハンノキは、もう少し器の大きな人間かと思ったのに残念だわ!ほら、許しをあげなさいよ」

ハンノキは笑顔で答えました。

「いやぁ!参ったな。さすがは、マルメロの母上だ。しかし、許しは出せない。結果が目に見えてるからな」

「どんな結果よ?どうせ、男の考えるような馬鹿げた結果でしょ?マルメロが誰か違う男に恋をするとか」

「おお!さすがは、母上!その通りだ。マルメロは、まだ若い。すぐに恋心を抱くやも知れん。ワシの気持ちも考えてくれ」

「はは!まったく、これだから男は!女はね、男が考えてるほど単純じゃないのよ。特にマルメロは!安心したら良いわよ。この子は恋なんてしないから」

母親は言い終えると、マルメロを見て笑いました。
マルメロは、自分が馬鹿にされているのかと思いましたが黙って様子を伺います。
ハンノキは悩んでいるようです。

母親は言いました。

「ほら、男ならちゃちゃっと許してあげな!マルメロを行かしてあげなさいよ」

「う〜ん…。マルメロよ、本当に大丈夫か?」

マルメロは急に話しをふられ驚きましたが、冷静に答えます。

「何を心配なさっているのから知りませんが、大丈夫です」

ハンノキは、マルメロの言葉を聞き頷きました。

「よし、行っても良いぞ!まったく、可愛らしいマルメロには勝てん!がははは!」

一事はどうなるかと思いましたが、すんなりと許しが出ました。
マルメロは嬉しく思い、母親にお礼をします。

「お母様、ありがとうございます」

すると、母親はハンノキに聞こえないくらいに小さな声で言いました。

「上手くやるのよ」

その言葉に、マルメロは心臓が止まるほど驚きます。
母親は、すぐにハンノキと会話を始めました。

マルメロは「お母様、どこまで分かっているの…」と、少し恐くなります。

「気をつけないと。私が甘いのかもしれない」

マルメロは、冷静を装いながらも心の中で自分を咎めました。
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