ペテン死のオーケストラ
先に口を開いたのはサイネリアでした。

「はぁ。やっぱり最低ね。女だったら誰でも良いのよ。マルメロも思ったでしょ?」

「そうね。サイネリアの言った通りの人だわ。相当な女好きなのね」

「そうよ。噂だけど王の妾は10人はいるそうよ。呆れて何も言えないわ。その中に誰が入りたいと思うのよ」

「へぇ〜…、10人ねぇ。なら、サイネリアと私をいれたら12人ね」

「ちょっと、冗談でも止めてよ。マルメロだって嫌でしょ?私は絶対に嫌!」

「ふふ、別に何とも思わないわ。まぁ、どうしてもって言うなら考えてあげても良いわね」

「え!?マルメロ、本気なの?ご主人は、どうするのよ?」

「冗談よ、冗談。そんな真剣にならないで。ただ、それはそれで面白そうと思っただけよ」

サイネリアは、マルメロの発言に本気で驚きました。
マルメロは、王の妾になりたがっているように感じたからです。

「冗談で終わらしてよね」

サイネリアは、マルメロに言いました。

しかし、マルメロの心は完全に王へと向けられていたのです。

「本当に王に近づけるかもしれない」

マルメロは、怪しく微笑みました。

その後は、王は姿をみせずマルメロとサイネリアはお喋りをして楽しみます。

マルメロは内心「サイネリアとの会話なんて要らないのよ。王はどこ?」と、王と話しがしたくてウズウズしています。

「子供がいるから、そろそろ帰らないと…」

サイネリアが、子供を心配しだしたのでマルメロも一緒に帰ることにしました。
結局、王とは一度しか会話ができなかったのです。

帰り道でも、サイネリアはマルメロに話し続けます。

マルメロは適当に相槌をつき、頭では別の事を考えていました。

「一度でも、王と話せたのよ。何としてでも、このチャンスを掴みとらないと」
マルメロの頭の中は、王の事でいっぱいです。
< 70 / 205 >

この作品をシェア

pagetop