キズだらけのぼくらは


気持ちは重くて、この時間を迎えるのがイヤでたまらなかった。

けれど、どんなにイヤでも怖くても、時間は立ち止まってくれないものなんだと、私はよく実感した。

なにもかもが面倒くさくて、スマホをカバンの中に放りこんで席を立つ。

塾に行く人やこれから楽しい寄り道をする生徒がまばらに教室から出ていく。

教室の中も半分以上の人間がいなくなったのを見て、私も下校組に混ざることにした。

混ざるといっても、孤立しているし、歩みも重りを引きずっているみたいにゆっくりだけど。

私は周りを気にしないようにして、外に目を向けた。

なんにも言わない外の景色は、人間を見ているよりも楽だから。

太陽はもう低くなってきていて、温かな黄色っぽい光に私は手をかざす。

思えば今日から衣替え。

白い長袖のブラウスは光りにかざすことで透き通り、中にある私の腕を影のように浮かび上がらせる。

秋の太陽もなかなか力強い。

そんな光を遮りながら、私は指の隙間から小さな空を見た。


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