キズだらけのぼくらは


私はちらりと壁掛けの時計に目をやった。

もうすぐ夜の9時をさそうとしている。

私はもう一度画面に向き直って、ネットの画面のお気に入りから、あるサイトを開いた。

たくさんの月の満ち欠けのイラストが、そこには表示されている。

その中でも今日の日付、11月2日と書かれた欄に目を凝らした。

「21時50分……」

その時刻をしっかりと頭の中に叩きこんで、私はベッドの上に置いてあった上着をさっと着ると、大きく深呼吸して部屋を飛び出した。

忍び足で、今の横の廊下を通り抜ける。

微かに開いたふすまの隙間からは、いい音を立ててかきの種にかじりつくお父さんの姿が見え、奥の方からは食器がぶつかり合う音がした。

お母さんは皿洗いをしているみたい。

家を抜け出すにはちょうどいい。

私は玄関でこそこそと靴を履き、ドアが音をたてないようにそーっと開けて、そして閉まりきる最後の時まで、手に汗を握って注意した。

「はぁ~……」

なんてスリル。

大きくため息をつく。


< 451 / 490 >

この作品をシェア

pagetop