優しい爪先立ちのしかた


聖のオセロ相手をしながら、栄生は寝転がるデブ猫を撫でる。

「デブちゃん妊娠してるの?」

「名前も妊娠も違う。ほら、お前の番」

「うん。あ、聖は結婚するの?」

微笑みながら訊くと、怪訝な顔を向ける聖。

デブ猫が栄生の手を甘噛みし始める。

「すると思ってた。なんとなく、聖は早めにって」

「僕の話はいい。お前はどうなんだよ?」

少しずつ日本酒を口に運ぶ聖。

月が綺麗だ。

「あの茶髪と」

「梢ね。何もないよ、本当に何も」

へえ、と黒い駒を置いて、栄生の白を裏返していく。

オセロの強い聖と栄生の勝敗は、五分五分。

「出来るんだったら、聖と結婚したかったなあ」

「あ?」

ついに頭が沸いたか、という視線に苦笑いを返す。



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