優しい爪先立ちのしかた
正直、今この状況を自分で打開する策が出なかった。
「では、すこしだけ」
荷物を持ったまま、梢は答えた。
通りかかった裏方の人に星屋と滝埜のことを聞いた。
「朝一番の新幹線で帰られましたよ?」
それを聞いて頭を抱える。そういえば、あそこの家族は朝が早い。そしていつも帰るのは早朝だった。
栄生はその足で父親の元へと行く。
和室には似合わないパソコン二台と、資料の山。
「帰るのか?」
「うん、昨日は無茶ブリしてごめん」
宴会のことだろう。苦笑いしながら肩を揺らす。