優しい爪先立ちのしかた
きみの肩幅





平均より大きい背丈。
パイプ椅子に座って項垂れた姿。


「梢」


嶺の声に、その場にいた三人がそちらを向いた。警官と栄生と同じくらいの歳の女性と、梢。

梢の視線はすぐに嶺の後ろの栄生に向いた。

警官と言葉を交わした嶺。栄生は何も発さない。

「あの、ありがとうございました。本当に、ありがとうございました」

女性が立ち上がって何度も梢にぺこぺこと頭を下げる。それを見て、事情をよく知らない嶺と栄生は驚いた。

「壱ヶ谷さんは彼女が男に絡まれているのを助けて、こんなカタチに」

呆れ半分でそう言った警官は、「帰って良いですよ」と梢に笑う。はーい、と目を合わせずに梢が不貞腐れたように返事をした。



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