あなたと私のカネアイ
「外見も悪くないし、年上っていうのも条件のひとつだったでしょ。七歳違い、あんたの理想ピッタリ。何より結愛の一番のこだわりをクリアしてるのよ?」

 デザートのブリュレを一口食べて、佳織は頬を緩ませた。

「口だけでは何とでも言えるじゃない!」

 私が唇を尖らせると佳織はため息をついた。

「あのね、初対面で結愛みたいにいくつも条件並べて、あげく『あなたのことは愛せません』っていう女と口だけで結婚する理由は何よ? 篠沢さんに不利な条件ばかりじゃない」

 そんなの、私の方が知りたい。
 こんな女と結婚したいなんて、篠沢円という人間はお金がありすぎて感覚がおかしくなった人間か、もしくは人間の姿をした本物の宇宙人だとしか思えない。

「とにかく篠沢さんはあんたのことが気に入ったんでしょ? で、あんたも条件に見合う男に出会えた」

 それは事実だけど、結婚ってそんなにお手軽なものだったっけ?
 顔を顰める私に、最後の一口を食べ終えた佳織が腕時計を見てナプキンで口を拭う。佳織ばかり喋ってたのに、どうやってブリュレも完食したんだろう。

「結婚指輪はあんたの店で一番高いの買ってもらえばいいし、新婚旅行は行きたがってたヨーロッパ一周に連れて行ってもらえば?」
「もう、他人事だと思って――」

 と、言いかけてコツリと私たちのテーブルで足を止めた人の気配に顔を上げて絶句する。
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