あなたと私のカネアイ
 まだ開けてないダンボールなどをクローゼットに押し込み、リビングへと向かった私を待っていたのはカフェのようなランチだった。
 広いリビング、キッチン寄りの一角に置かれたテーブルには出来立てのパスタとサラダが二人分用意されている。
 ランチョンマットの上に置かれたそれらの盛り付けに思わず見惚れてしまう。
 パスタの具材は麺の上に載っているし、サラダに添えられたトマトや卵の切り方が綺麗でびっくりする。フライパンで具材と麺を絡めたら流し込むようにお皿に載せてしまう私とは大違い……。トマトや卵だってぐちゃっとなっても気にしないのに。
 料理のできる夫を持って喜ぶべきところなのだけど、なんだか複雑だ。
 そんなことを考えてこっそりため息をついた私が椅子に座ると、水の入ったグラスを持って円さんがキッチンから出てきた。

「はい」

 円さんがグラスをそれぞれのコースターに置いて座る。
 至れり尽くせりってこういうことかも?

「……いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」

 円さんの笑顔に促されて、フォークを手に取り、パスタを口に運ぶ。

「お口に合いますか? 奥さん」

 おどける円さんはとても嬉しそうで。なんだか変な気分だ。

「おいしいです。お料理、上手なんですね」
「まぁ、長くやってればそれなりにできるようになるってこと」

 円さんはそう言って、自分も食事を始めた。
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