あなたと私のカネアイ
「そうしてくれると助かるな。それからこれとお揃いでピアスかネックレスなんかがあったらそれも欲しいんですが」
「ヒッ――ま、円さん! 指輪もピアスもネックレスもいりませんから、もう帰りましょう」

 私は円さんに縋りつくようにして腕を掴んだ。円さんは私を見下ろして「お金の心配はいらないよ」と微笑んでいる。
 そうじゃない。お金があることはもう知ってる。
 確かに私はお金という条件で結婚したけど、こんな無駄遣いをしたいわけじゃない。

「そうだ。この後、洋服も買いに行こうか」
「っ、円さん!」
「あ、靴もいるね」

 ああああああ! もう!!

「円!」

 店内にいることも忘れて叫ぶと、シンとなった周囲を気にすることもなく、円さ――円は満面の笑みを浮かべて「ついでに敬語もやめてみようか」と言い出した。
 いけしゃあしゃあと、この宇宙人!

「わかった。わかったから……帰ろう」
「そう? じゃあそういうわけで、青山さん。頼んでおいたものを受け取りに来ました」

 円は私の頭をポンと大きな手で叩いて言う。
 頼んでた……?
 サーっと血の気が引いていく。まさか、もうすでに買ってたなんてこと――
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