異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
五月病の大学院生
 大学院に入って一か月が経過した。けれど、まだ学校に慣れた感じがせず、疎外感のような不安のようなものを感じている。
 これはいわゆる五月病というやつだ。

 茉実は生まれ育った東京を出て、遠く離れた町にある自分が出た大学とは別の大学にある修士課程に入学した。この春卒業した大学はAランクの私立大学だったが、この度入学したのは地方にある一期校の国立大学である。本来の茉実の実力では、学部からこの大学には入れない。修士課程から偏差値の高い大学へ入ることを、世間では「学歴ロンダリング」と呼んでいるらしい。
 専攻は経済学で、専門はマクロ経済だが、正直、自分でもその分野のことはあまりわかっていない。

 修士課程に入ったのは勉強が好きだからではなく、就職が決まらなかったからだ。さらに二年間の猶予期間をもらうことで、課程を終える頃にはなんとかなればいいと願っている。それから失恋もした。大好きな人に裏切られた。同じ沿線に住む彼と電車の中でうっかり出会ったら嫌だから、思い切って環境を変えた。会うどころか、ニアミスすらしない遠くの町へ住もうと思った。
< 1 / 14 >

この作品をシェア

pagetop