異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
 それからも茉実は「カフェふたば」に通い続けた。
 週末には時折、店主の夫が顔を出すことがある。彼女よりいくつか年上の、ハンサムでダンディーなおじさまだ。女の幸せとやりがいのある仕事を手に入れた彼女が、若い茉実にはうらやましくもありまぶしくもある。
 彼女みたいな人にも不遇の時代があったなんてちょっと信じられない。

 気がついたら季節は梅雨に入ってきて、憂鬱な空模様が見え隠れするようになってきた。けれど、五月特有の病はいつの間にか跡形もなく消え去っていた。【了】
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