異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
 大学からアパートへ帰る途中のことだった。時刻は夕方の4時くらいである。
 茉実はこぎれいな家々が建ち並ぶ、閑静な住宅街をスクーターで通り抜けていた。彼女は大通りからそれて、抜け道を探していた。
 
 四つ角にぶつかった時、右手に店が見えた。洋風住宅の一階部分がカフェになっている店だ。ティーポット型の看板に、「cafeふたば」と書かれ、その文字の横には緑色の双葉が描かれている。商業施設の少ないエリアにこんなカフェがあったなんて。

 興味を引かれた茉実は、スクーターから降りて店の駐車スペースに停めた。入口の脇には、プランターにいっぱいのマーガレットとパンジー、それからブリーディングハートが咲いている。この季節の花々だ。手入れの行き届いた様子から店主のマメな性格がうかがえる。
 入口の扉には、真ん中に”Welcome”と書かれた大きな造花のリースが掛けられている。ドアを開けて中に入ると目の前にカウンターが見えた。カウンターの後ろの棚には、様々な洋風茶器が並べられている。これらは店主のコレクションなのだろう。実際、お客に飲み物をサーブする時に、この茶器のどれかを使うのだろう。
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