無花果
果実
種果が言った恋の花は、

オレの花は永遠に咲かないと知った。

「大丈夫。きっとね、新しい種がすぐ見つかるから。私みたいに」

種果の顔を見ると種果の目からも涙が流れていた。

「種果・・・」

言葉を発しては駄目だと言うように、唇に指を置いて種果はオレから離れた。


「たね、姉さん、結婚おめでとう」

「ありがとう」




季節はあっという間に、変わって春になった。

姉は家を出て、景吾さんと結婚して名前が変わった。

姉が欲しかったものがようやく手に入ったんだ。幸せじゃないわけがない。

義父は最初は反対していたけど、姉の意志と多分、姉のお母さんに対する償いの念があったのだろう。結婚を許した。
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