恋愛歳時記
『小悪魔め!』

何となく言われた気がしたけど、キスに溺れた私にはよくわからなかった。

征司さんの唇は厚くもなく、むしろ薄目なのに弾力があって温かい。
大きな唇に自分の唇が飲み込まれるんじゃないかと思ったキスは、私から思考力を奪った。
どうやって息継ぎしたかもわからない。

気付いたときには服も下着も剥ぎ取られ、無防備な状態で征司さんの目の前に。

「キレイだ」
「かわいい」
「大事にする」

何回も耳元でささやかれ、そのたびに身体が自分のものではなくなっていく。

征司さんに触れられ、舐められ、ときに吸いつかれ。

一糸まとわぬ大きな身体が、一旦離れて、再び私のもとに戻ってきたとき。
私は待ち焦がれて、自分から征司さんの背中に腕をまわして迎え入れた。

切れ切れの声でなんとか伝える。

「わたしっ、あ、ひさし、ぶり、だからっ」

征司さんがすごく嬉しそうな顔をした。

「わかった。ゆっくり、じっくり、だな」

そう言っていたくせに。

私は激しく揺さぶられ、息苦しくなるほどキスされて。

全身で「お前に夢中だ」と言われた気がした。


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