Secret Fetishism【SS集】
「どうかしました?」

「あ、浴衣……着なかったのね」

咄嗟に会話を探したあたしに、彼が苦笑する。

「帯の結び方、わからなくて。先輩は色っぽいですね」

「そ、そう?」

「はい。だから……」


彼の唇が耳元に寄せられた事を、理解した瞬間。

「そんな熱い目で見ないで下さい」

低い囁きが響いた。


「その顔、色っぽいですね」

「え……?」

「でも……俺以外の男には見せたくない」


誘うように頬に触れる指先が、首筋に下りていく。
悪戯に肌をなぞるその行為に、背筋が粟立った。


「俺があなたを好きな事、知ってました?」

目を見開くあたしを見下ろす彼が、瞳の奥を鋭く光らせる。

「だから、この顔を他の男に見られるのはムカつきます」


悩ましげに眉を寄せた彼の唇が、あたしの唇に触れる寸前。
頭の中を過ぎったのは、彼の腹筋を滴る蜜。



食べられるのはどっち――?





             END.


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