ハートフル・アーツ
総本山

「はぁ…はぁ…」


幸大が戻って来たのは日付が変わった後だった


「幸大!」


なずなが肩を支える


「おめでとう。

修行はクリアしたみたいだね。」


「ああ…」


「明日…というか、今日になるのかな、もう。


今日の修行で残りの一つの御堂をクリアしてもらう。


それから、最後に僕と戦うと言う修行は中止だ。」

「え?」

「まぁ…君にとって一番良い方法を僕は選ぶ。


それだけは信じてほしい。」


幸明が言う


「ふざけるな!!


幸大がボロボロじゃないか!

これが幸大にとって一番良い方法だと言うのか!」


なずなが怒鳴る



「そうだよ。」



静寂が周囲を包む


「僕は愛した人を失った…


そして…僕は愛した人をこの手で、君たちの鍛え続けている武神流で殺した。」

「!」


幸大となずなは驚く


「と言うのは嘘だけどね。」


「は?」

幸大が言う


「でも…幸大君、君にはその可能性がある。


なずなちゃんを殺す可能性も…すみれちゃんを殺す可能性もある。



未熟な力は…災厄を打ちのめせない。」



幸明が言う


「どういうことだよ…」


「君が直接なずなちゃんたちを傷つけるんじゃない。

君という未熟な存在が傷つける。」


「たがらどういうことだよ!」


「武神流…武術家にとってその流派は目指す指標になることが多い。


武神流のような流派をつくりたい、武神流を超えたい、武神流と戦いたい。


思いは様々だ。


さて…そんな武神流の継承者が未熟な奴で、素人。


武術家なら誰もが頑張れば倒せるような奴。



そんな話が流れたら誰もがこの武神流を狙いにくる。


当然、武神流であるなずなちゃんたちにも危害が加わる。

そういうことさ。」


「だからと言って幸大に無理をさせすぎだ!!

私たちだって闘えるんだ、急がなくても…」

「なずな…ありがとう。

でも…幸明を師匠と呼ぶと決めたのは俺だ。

幸明を信じるよ。」


幸大が笑う

「それでこそ…僕の弟子だ。」



「はぁ…

男とは馬鹿だな…心配してる私がアホらしい。」

なずなが優しく笑いながら呟いた
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