不器用上司のアメとムチ

「仕方ないんじゃね?梅チャン相当おバカさんみたいだから、幼稚園児にするみたいに優しくしねーと。ねぇ久我さん?」


チャラ男佐々木も、森永さんに便乗してそんな毒を放った。

久我さんに“梅”と言われるのも腹が立つけど、こいつに“梅チャン”と言われるとその百倍腹が立つ。

思わず言い返そうと一歩踏み出すと、久我さんがあたしにだけ聞こえる小さな声で「今は、我慢しろ」と呟いた。


「……別に甘くしてるつもりはねぇよ。美人はもちろん好きだが、こいつはそれ以前に問題ありすぎだ。つまんねぇこと言ってねぇで、さっさと自分らのやるべきことをやれ」


はーい、と棒読みで声を揃える二人に、反省の色は全く見えない。

きっと、これからもあたしは事あるごとにこうして嫌がらせを受けるんだろうなと思った。

でも、あたしは大丈夫。

昔から、あたしを好きになる男以上にあたしを嫌う人はたくさんいたから、こんなの慣れてる。

それに……どうやら久我さんは、口は悪いけど信用できる人みたいだし……

あたしは不機嫌そうな彼の背中を見ながら、ぼんやりとそんなことを思った。

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