不器用上司のアメとムチ

「あ、あのっ!決してあのぶっきらぼうで不器用で薄汚れているけど、実は優しくて気配りができて、煙草の香りがセクシーなあたしの上司ではありませんから!!
――断じて、違いますっっ!!」


気がついたらソファから立ち上がり、大声で叫んでいたあたし。

今あたしにできる最大級の否定をしたつもりなのに、京介さんは驚いたように言う。


「まさか……本当に久我なのか」


あれ?なんか逆効果……?

なんで……

叫びすぎてちょっと酸欠気味のあたしは、肩で息をしながらソファにお尻を沈める。


「ふうん……それは面白い」


パタン、とファイルを閉じた京介さんが、再びこちらに近づいてきて、そのファイルであたしの顎を引き上げる。


「辞めさせるという案は撤回する。アイツとはちょっと因縁があってね……」

「……因、縁……?」

「そう。その時は僕が勝ったけど、いつかもう一度久我の鼻をあかしてやりたいと思ってたんだよね。
……決めた。僕はヒメの心をアイツから奪うよ」

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