不器用上司のアメとムチ
霞と俺は同期で入社し、社長の息子であるヤツは副社長の椅子が約束されていたが、始めは勉強のために色々な課を回っていた。
そして当時たまたま俺の居た、工場の焙煎課という部署に霞が来たときに、俺たちは何故か意気投合したんだ。
外見も中身もがさつな俺と、育ちのよさを全身に滲ませた、王子という言葉がぴったりはまる霞。
たぶん、お互いに自分と正反対の相手に興味を持ち、惹かれたんだと思う。
そして、あいつが副社長になった七年前……
『久我を僕の秘書にしたい』
霞が、そう指名してきたんだ。
……俺は素直に嬉しかった。
慌てて秘書検定を取り、霞のために身なりも綺麗にして、真面目に業務を遂行し、副社長の片腕と呼ばれるまでになった。
しかし、仕事を頑張りすぎたのがいけなかったらしい。
いつしか、“あの秘書は副社長より有能なのでは…?”
そんな噂が流れるようになった。