不器用上司のアメとムチ
ふうん……そうなんだ。
でも、京介さんはいつも早い時間に帰っていた気がする。
だからあたしとたくさんデートしてくれて……久我さんたちは、その間も仕事をしてたってことだよね。
「……なんだ?神妙な顔して」
「なんでもない、です……」
一つ仕事を覚える度に、自分が今までしてきたことを否定されていく気がした。
それは森永さんたちに嫌味を言われるよりもずっと、あたしを憂鬱にする。
「あたし……今まで何してたんだろ……」
独り言として呟いただけだったのに、彼女はなんて地獄耳なんだろう。
「ただの王子の飾りでしょ?」
森永さんがそう毒づいて席を立ち、どこかへ行ってしまった。
よく見ると、いつの間にか管理課のオフィス内にはあたしだけになっていて、その理由は壁にかかった時計を見れば解った。
「もう、お昼なんだ……」
時間は正午を15分過ぎたところで、すぐに席が埋まってしまう社員食堂に行くには少し遅すぎる。